このページで解説する『フリッカー=ちらつき』について:
LED(フィラメント)電球のちらつきを調べるためネット検索でこのページに訪問いただく方が増えてきました。このページで解説する『フリッカー』は一般的に我々の肉眼では見えない『フリッカー=ちらつき』を指しており、肉眼で確認できる『ちらつき』とは異なります。後者の肉眼で確認できる『ちらつき』は主にLED電球に内蔵されている電源その他の不良や故障が原因で引き起こされる現象です(粗悪品や経年劣化)。
しかし前者の正常に点灯しているように見える、肉眼で確認できない『フリッカー=ちらつき』は脳では認識しており、これによって人の健康を害することが指摘されており、知らず知らずのうちに健康被害に陥っている可能性があります。自己防衛のための対策が必要です。このページではこのLED電球の『フリッカー』現象について解説いたします。ぜひこの機会に知っていただき参考にして頂きたいと思います。
2020年7月
LED電球のフリッカー(ちらつき)測定と考察
2018年8月
フリッカーの健康被害
2010年、札幌市役所庁舎で入札により納入された直管型LEDランプ(いわゆるLED蛍光灯)のちらつきが原因で「目が疲れる」「体がだるい」「気分が悪くなる」などの声が上がり、大きな社会問題となりました。
LEDは周期的に電圧が変動するAC(交流)からDC(直流)に変換されて点灯しますが、蛍光灯のような残光時間がありません。50Hzの場合1秒間に100回、60Hzの場合1秒間に120回の頻度で瞬時にオンオフをくりかえして点灯します(無点灯状態が存在する)。その結果「ちらつき」を感じやすくなり、上記のような症状を訴える人が現れたと言われています。
そのようなこともあり、2012年に電気用品安全法(PSE)の改定が行われ、LEDを光源とする製品に安全性や雑音等に関する技術基準が設けられるようになり、フリッカー(ちらつき)に関しても一定の基準が設けられました。
フリッカーとは
フリッカー(ちらつき)の周波数は一般的に、電源周波数(通常は50または60Hz)と等しいか、電源周波数の2倍のどちらかです。
白熱電球、ハロゲン球、蛍光灯またはLEDであれ、日中の太陽光の下でない限り私たちは交流電源(AC)由来によるフリッカーに晒されていると言えます。
LED光は、AC(交流)からDC(直流)に変換されて提供されますが(整流と平滑)、その際の脈流がフリッカーとなって現れます。フリッカーを低減するには、脈流を小さくする安定した回路が求められます。
フリッカーの指標 Flicker metrics
フリッカーを定量化するために、アメリカの照明工学協会(IES)が策定した二つの指標があります。
- フリッカー率 Percent Flicker
光源の出力における周期変動の相対的な尺度(すなわち、変調率)。
フリッカー率=100×(A-B)/(A+B)
0%~100%。フリッカー率が低いほど、フリッカーは実質的に小さくなる。 - フリッカーインデックス Flicker Index
平均光出力レベルを上回る領域の、1サイクルの光出力曲線下の総面積に対する比率。
フリッカーインデックス=Area1/Area1+Area2
0〜1。フリッカー指数が低いほど、フリッカーは実質的に小さくなる。
電気用品安全法(PSE)の技術基準
『電気用品安全法』ではフリッカー(ちらつき)について以下の通り定めています。
一般照明用として光源にエル・イー・ディーを使用するものにあっては、光出力は、ちらつきを感じないものであること。
この場合、次に掲げるものは、「光出力は、ちらつきを感じないもの」とみなす。
a 出力に欠落部(光出力のピーク値の5%以下の部分)がなく、繰り返し周波数が100Hz 以上であるもの。
b 光出力の繰り返し周波数が500Hz 以上であるもの。
各種電球のフリッカー測定
2018年7月、楽天、amazon等ネット通販で各社LED電球を購入しフリッカーを測定しました。光出力の波形グラフ右横の数字が計測値で、上から2段目Percentage(IES)がフリッカー率、3段目Index(IES)がフリッカーインデックスです。
白熱電球のフリッカー
シリカ電球
ミニクリプトン電球
シリカ電球57Wとミニクリプトン電球54Wを計測。共にフリッカー率6.0%前後。これら白熱電球は電圧が周期的に変動する交流電源で点灯しますが、フィラメント(タングステン)が熱せられて発光するため、電圧がゼロの時でも残光時間があるので消えずに点灯しています。
各社LED電球のフリッカー
弊社製造LEDフィラメント電球G50-4D3.5W-E26。フリッカー率0.38%。今回計測したLED電球の中で最も低い。
弊社製造LEDフィラメント電球A60-6D5W-E26。フリッカー率0.44%。
弊社製造BRCHS5-3COT-E17。フリッカー率2.3%。
弊社製造LEDクリスタルシャンデリア球CRC3W-E17。フリッカー率4.5%。白熱電球以下の低いレベル。
A社LEDシャンデリア球。大手インターネットショッピングモールで販売。フリッカー率74.0%。光出力の最大最小値の差が大きくちらつきが大きい。
家電メーカーB社LEDシャンデリア球。フリッカー率16.4%。
家電メーカーC社LEDシャンデリア球。フリッカー率5.3%。
家電メーカーD社ミニクリプトンタイプLED小型電球。フリッカー率12.1%。
ランプメーカーE社ミニクリプトンタイプLED小型電球。フリッカー率25.1%。
F社LEDシャンデリア球。国内の複数の大手インターネットショッピングモールで販売。フリッカー率99.8%。光出力の最小値がほとんど0の無電圧状態があり、電気用品安全法(PSE)で規定される光出力に『欠落部』が存在。電気用品安全法(PSE)に不適合の疑い有り。
G社LEDフィラメントシャンデリア球。フリッカー率32.7%。
G社LEDフィラメント電球。フリッカー率55.6%。振幅が大きい。
電気用品メーカーH社LEDフィラメントシャンデリア球。フリッカー率11.4%。
電気用品メーカーH社LEDフィラメント電球。フリッカー率25.6%。
中国大手Ledフィラメント電球メーカーI社。フリッカー率85.6%。光出力の最大値と最小値の差が非常に大きい。フリッカー率90%に達すると電気用品安全法(PSE)に不適合。
中国大手Ledフィラメント電球メーカーI社。フリッカー率87.0%。光出力の最大値と最小値の差が非常に大きい。フリッカー率90%に達すると電気用品安全法(PSE)に不適合。
台湾大手LEDフィラメント電球メーカーJ社。フリッカー率49.1%。
中国輸出メーカーK社LEDシャンデリア球。フリッカー率99.8%。光出力の最小値がほとんど0の無電圧状態があり、電気用品安全法(PSE)で規定される光出力に『欠落部』が存在。電気用品安全法(PSE)に不適合の可能性有り(その場合日本での販売は不可)。
【総評】
フリッカー率は、弊社製品0.38~4.5%、国内大手家電メーカー製5%~16%、国内メーカー製(中国OEMと思われる)11%~55%、ネット通販会社(中国OEM)74%~99.8%、中国輸出メーカー製49%~99.8%という結果でした。
今回のテストで、総体的にLEDフィラメント電球はフリッカー率が非常に高い傾向にあることが分かります。中には光出力最小値がほとんどゼロで、電安法(PSE)の技術基準に達していないと思われる製品がありました。LEDフィラメント電球のフリッカー率が高くなる原因については 今回ここでは触れませんが、弊社は当初からこの問題に着目し、その解消に向けて取り組んできました。そして今日、弊社製品は上記計測数値にあるような、ほとんどちらつきが無いレベルの『フリッカーフリー』を実現しています。
※注:電安法(PSE)の技術基準に達していない製品(不適合製品)は、国内では販売することができません。
まとめ―フリッカーフリーを目指して
人の目は50Hz以上のフリッカーを認識することができないと言われています。フリッカーによる健康被害が言われて久しいですが、目でとらえることができないフリッカーがどの程度人の健康に影響を及ぼすかは、まだ明らかになっていないようです。しかし人の脳は150Hzまでの点滅光に反応しているという研究結果もあるようです。
フリッカーは照明だけでなく、液晶モニターから生じるフリッカーにも関心が高まってきているようで、数年前から液晶モニター大手メーカー「BenQ」がフリッカーフリー製品を販売しています。 BenQのWEBサイトへ
このサイトでは、フリッカーが目に与える影響について説明しています。
長時間フリッカーに晒されることで人の健康に悪影響を与えることは間違いないようです。
撮影に影響する『フリッカー』:
フリッカーの程度にもよりますが、フリッカーの強い光源下で写真やビデオ撮影を行った場合、激しいスジが現れるなど悪影響を及ぼす場合があります。フリッカーの有無を調べるには簡易的な方法として、スマホのカメラで光源に数cmの距離まで接近して確認する方法があります。激しいフリッカーを持つLEDランプの場合は黒い帯(スジ)のような縞模様が画面に現れます。しかし近年スマホカメラの性能向上により特に上位機種では完全に補正され確認することができません(例:iphone5でははっきりと確認できるがiphone14では確認できなかった)。
そのためフリッカーフリーのランプは撮影スタジオやプロのカメラマンには必需品です。撮影機会の多いホテルや結婚式場、店舗などでもフリッカーフリーのLED照明は必要設備だと考えます。
※近接撮影でフリッカー現象を比較。上段他社製品のようにフリッカー率が高くなると黒い筋が現れるようになる。
ただし肉眼では確認できない。
電気用品安全法(PSE)が規定するフリッカーの技術基準を、IESの指標である「Percent flicker-フリッカー率」で評価する場合、それが90%以内であればPSEに適合しているということになります。しかし項目aにおける「欠落部は最大出力値の5%以下」という数値設定は、電圧レベルがゼロに非常に近く、明暗差の大きいフリッカーを許容することになるので、この数値設定は非常に低いのではないかと考えます。
弊社は白熱電球のフリッカー率が6.0%前後であることを鑑みて、オリジナルLED電球のフリッカー目標値を白熱電球と同等レベル、或はそれ以下とし、『フリッカーフリー』を追求しています。
今回明らかに電気用品安全法(PSE)の技術基準に適合していないと思われる製品がありました。この製品はPSEマークを付けて販売されていました。この会社のネット通販での品揃えの多さを見ると他の製品はどうなのか、製品や会社に対する信用性が非常に気になるところです。
また、よく『PSE認証取得済み』として、英語で書かれた海外(主に中国)の検査会社の証明書をわざわざ見せているサイトを見かけますが、よく見ると検査基準自体が不適切であることが見受けられます(一般の方は間違っていることが分からないのでそれを信用してしまいます)。各国それぞれ制度が異なり技術基準や法改正も度々行われるため、検査会社ですら正しく理解できていないことがあるのではないか。検査会社(主に中国)や製品を販売する企業(中国企業だけでなく日本の販売会社)でさえ証明書が不適切であることも分からないで販売するという『無知』ゆえに、ネットで広く流通してしまう一つの理由であると思われます。しかしそんな『無知』が許されていいはずがありません。監督官庁には厳しい罰則を設けるなどして、しっかり監視・取り締まりをしていただきたいものです。
2018年8月、2020年7月加筆
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