フリッカーが現れているLED電球

LED電球のフリッカー(ちらつき)測定と考察

このページで解説する『フリッカー=ちらつき』について:
LED(フィラメント)電球のちらつきを調べるためネット検索でこのページに訪問いただく方が増えてきました。このページで解説する『フリッカー』は一般的に我々の肉眼では見えない『ちらつき』を指しており、肉眼で確認できる『ちらつき』とは異なります。肉眼で確認できるような『ちらつき』は、経年劣化からくる不良や故障等が原因であることが多く、その場合新しいものに交換することで問題は解決します。ここで問題にしているのは肉眼では確認できないような高速の『ちらつき』を持つLED照明です。なぜならそのちらつきが目に見えなくても実は脳ではそのちらつきを認識していると言われており、それが人の健康を害することに繋がっている可能性があると言われているからです。もしそれが事実であれば、肉眼では確認できない『ちらつき』を持つ照明が私たちの日常に存在しているとしたら、私たちは知らず知らずのうちに健康被害に陥っている可能性があります。このページではこのLED電球の『フリッカー』現象についての解説及び自社他社製品のフリッカー率を測定し比較しています。ぜひこの機会に知っていただき参考にして頂きたいと思います。

2020年7月

フリッカーによる健康被害

 2010年、札幌市役所庁舎で入札により納入された直管型LEDランプ(いわゆるLED蛍光灯)の『ちらつき(目で確認できないような高速のちらつき)』が原因で「目が疲れる」「体がだるい」「気分が悪くなる」などの声が上がり、大きな社会問題となりました。

 LEDは周期的に電圧が変動するAC(交流)からDC(直流)に変換されて点灯しますが、蛍光灯のような残光時間がありません。50Hzの場合1秒間に100回、60Hzの場合1秒間に120回の頻度で瞬時にオンオフをくりかえして点灯します(無点灯状態が存在する)。その結果「ちらつき」を感じやすくなり、上記のような症状を訴える人が現れたと言われています。
 
 そのようなこともあり、2012年に電気用品安全法(PSE)の改定が行われ、LEDを光源とする製品に安全性や雑音等に関する技術基準が設けられるようになり、フリッカー(ちらつき)に関しても一定の基準が設けられました。

フリッカーとは

 フリッカー(ちらつき)の周波数は一般的に、電源周波数(通常は50または60Hz)と等しいか、電源周波数の2倍のどちらかです。
白熱電球、ハロゲン球、蛍光灯またはLEDであれ、日中の太陽光の下でない限り私たちは交流電源(AC)由来によるフリッカーに晒されていると言えます。
LED光は、AC(交流)からDC(直流)に変換されて提供されますが(整流と平滑)、その際の脈流がフリッカーとなって現れます。フリッカーを低減するには、脈流を小さくする安定した回路が求められます。

フリッカーの指標 Flicker metrics

フリッカーを定量化するために、アメリカの照明工学協会(IES)が策定した二つの指標があります。

フリッカー率 (Percent Flicker)

光源の出力における周期変動の相対的な尺度(すなわち、変調率)。
フリッカー率=100×(A-B)/(A+B)
0%~100%。フリッカー率が低いほど、フリッカーは実質的に小さくなる。

フリッカーインデックス (Flicker Index)

平均光出力レベルを上回る領域の、1サイクルの光出力曲線下の総面積に対する比率。
フリッカーインデックス=Area1/Area1+Area2
0〜1。フリッカー指数が低いほど、フリッカーは実質的に小さくなる。

電気用品安全法(PSE)の技術基準

『電気用品安全法』ではフリッカー(ちらつき)について以下の通り定めています。

一般照明用として光源にエル・イー・ディーを使用するものにあっては、光出力は、ちらつきを感じないものであること。
この場合、次に掲げるものは、「光出力は、ちらつきを感じないもの」とみなす。
a 出力に欠落部(光出力のピーク値の5%以下の部分)がなく、繰り返し周波数が100Hz 以上であるもの。
b 光出力の繰り返し周波数が500Hz 以上であるもの。

各種電球のフリッカー測定

白熱電球のフリッカー率

シリカ電球

ミニクリプトン球

シリカ電球57Wとミニクリプトン電球54Wを計測。共にフリッカー率6.0%前後。これら白熱電球は電圧が周期的に変動する交流電源で点灯しますが、フィラメント(タングステン)が熱せられて発光するため、電圧がゼロの時でも残光時間があるので消えずに点灯しています。

各社LED電球のフリッカー率

弊社製品及び他社製品のLEDフィラメント電球を中心に、フリッカー率を測定しました。

弊社製造LEDフィラメント電球G50-4D3.5W-E26。フリッカー率0.38%。今回計測したLED電球の中で最も低い。

弊社製造LEDフィラメント電球A60-6D5W-E26。フリッカー率0.44%。G50同様に低いレベルである。

弊社製造BRCHS5-3COT-E17。フリッカー率2.3%。白熱電球以下の低いレベル。

弊社製造LEDクリスタルシャンデリア球CRC3W-E17。フリッカー率4.5%。白熱電球以下の低いレベル。

ネット販売業者A社LEDクリスタルシャンデリア球。大手インターネットショッピングモールで販売。フリッカー率74.0%。光出力の最大最小値の差が大きくちらつきが大きい。

国内大手有名家電メーカーB社LEDシャンデリア球。フリッカー率16.4%。

国内大手有名家電メーカーC社LEDシャンデリア球。フリッカー率5.3%。

国内大手有名家電メーカーD社ミニクリプトンタイプLED小型電球。フリッカー率12.1%。

国内ランプメーカーE社ミニクリプトンタイプLED小型電球。フリッカー率25.1%。

ネット通販業者F社LEDシャンデリア球。国内の複数の大手インターネットショッピングモールで販売。フリッカー率99.8%。光出力の最小値がほとんど0の無電圧状態があり、電気用品安全法(PSE)で規定される光出力に『欠落部』が存在。電気用品安全法(PSE)に不適合の疑い有り。

国内大手LEDフィラメント電球販売会社のシャンデリア球。フリッカー率32.7%。

国内大手LEDフィラメント電球販売会社。フリッカー率55.6%。最大から最小の振幅が大きい。

国内大手電気用品メーカーH社LEDフィラメントシャンデリア球。フリッカー率11.4%。

国内大手電気用品メーカーH社LEDフィラメント電球。フリッカー率25.6%。

中国大手LEDフィラメント電球メーカーI社。フリッカー率85.6%。光出力の最大値と最小値の差が非常に大きい。フリッカー率90%に達すると電気用品安全法(PSE)に不適合。

中国大手LEDフィラメント電球メーカーI社。フリッカー率87.0%。光出力の最大値と最小値の差が非常に大きい。フリッカー率90%に達すると電気用品安全法(PSE)に不適合。

台湾大手LEDフィラメント電球メーカーJ社。フリッカー率49.1%。振幅が大きい。

中国輸出メーカーK社LEDシャンデリア球。フリッカー率99.8%。光出力の最小値がほとんど0の無電圧状態があり、電気用品安全法(PSE)で規定される光出力に『欠落部』が存在。電気用品安全法(PSE)に不適合の可能性有り(その場合日本での販売は不可)。

【総評】

フリッカー率は、弊社製品0.38~4.5%、国内大手有名家電メーカー製5%~16%、国内大手メーカー製(中国OEMと思われる)11%~55%、ネット通販業者(中国OEM)74%~99.8%、中国輸出メーカー製49%~99.8%という結果でした。

 今回のテストで、総体的にLEDフィラメント電球はフリッカー率が非常に高い傾向にあることが分かります。中には光出力最小値がほとんどゼロで、電安法(PSE)の技術基準に達していないと思われる製品がありました。LEDフィラメント電球のフリッカー率が高くなる原因については 今回ここでは触れませんが、弊社は当初からこの問題に着目し、その解消に向けて取り組んできました。そして今日、弊社製品は上記計測数値にあるような、ほとんどちらつきが無いレベルの『フリッカーフリー』を実現しています。

※注:電安法(PSE)の技術基準に達していない製品(不適合製品)は、国内では販売することができません。

まとめ―フリッカーフリーを目指して

人の目は50Hz以上のフリッカーを認識することができないと言われています。フリッカーによる健康被害が言われて久しいですが、目でとらえることができないフリッカーがどの程度人の健康に影響を及ぼすかは、まだ明らかになっていないようです。しかし人の脳は150Hzまでの点滅光に反応しているという研究結果もあるようです。

 フリッカーは照明だけでなく、液晶モニターから生じるフリッカーにも関心が高まってきているようで、数年前から液晶モニター大手メーカー「BenQ」がフリッカーフリー製品を販売しています。 BenQのWEBサイトへ
このサイトでは、フリッカーが目に与える影響について説明しています。
長時間フリッカーに晒されることで人の健康に悪影響を与えることは間違いないようです。

撮影に影響する『フリッカー』:
 フリッカーの程度にもよりますが、フリッカーの強い光源下で写真やビデオ撮影を行った場合、激しいスジが現れるなど悪影響を及ぼす場合があります。フリッカーの有無を調べるには簡易的な方法として、スマホのカメラで光源に数cmの距離まで接近して確認する方法があります。フリッカーを持つLEDランプの場合は黒い帯(スジ)のような縞模様が画面に現れます。しかし近年スマホカメラの性能向上により特に上位機種では補正されるようで黒い帯を確認することができない場合があります。
フリッカーフリーの照明設備は撮影スタジオやプロのカメラマンには必需品です。撮影機会の多いホテルや結婚式場、店舗などでもフリッカーフリーのLED照明は必要設備だと考えます。

※近接撮影でフリッカー現象を比較。上段は他社製品で黒い筋が確認できる。フリッカー率が高くなると黒い筋が激しく現れるようになる。ただし肉眼では確認できない。

 電気用品安全法(PSE)が規定するフリッカーの技術基準を、IESの指標である「Percent flicker-フリッカー率」で評価する場合、それが90%以内であればPSEに適合しているということになります。しかし項目aにおける「欠落部は最大出力値の5%以下」という数値設定は、電圧レベルがゼロに非常に近く、明暗差の大きいフリッカーを許容することになるので、この数値設定は非常に低いのではないかと考えます。
 弊社は白熱電球のフリッカー率が6.0%前後であることを鑑みて、オリジナルLED電球のフリッカー目標値を白熱電球と同等レベル、或はそれ以下とし、『フリッカーフリー』を追求しています。
 今回明らかに電気用品安全法(PSE)の技術基準に適合していないと思われる製品がありました。この製品はPSEマークを付けて販売されていました。この会社のネット通販での品揃えの多さを見ると他の製品はどうなのか、製品や会社に対する信用性が非常に気になるところです。
 また、よく『PSE認証取得済み』として、英語で書かれた海外(主に中国)の検査会社の証明書をわざわざ見せているサイトを見かけますが、よく見ると検査基準自体が不適切であることが見受けられます(一般の方は間違っていることが分からないのでそれを信用してしまいます)。各国それぞれ制度が異なり技術基準や法改正も度々行われるため、検査会社ですら正しく理解できていないことがあるのではないか。検査会社(主に中国)や製品を販売する企業(中国企業だけでなく日本の販売会社)でさえ証明書が不適切であることも分からないで販売するという『無知』ゆえに、ネットで広く流通してしまう一つの理由であると思われます。しかしそんな『無知』が許されていいはずがありません。監督官庁には厳しい罰則を設けるなどして、しっかり監視・取り締まりをしていただきたいものです。

2018年8月、2020年7月加筆

LEDフィラメント電球イミュニティ
新製品。LEDフィラメント電球イミュニティはJISのEMCイミュニティ規格に適合したLEDフィラメント電球です。

フリッカーフリーのLED電球

フリッカーフリーのLEDフィラメント電球プレミアムに新シリーズ<イミュニティ>が新登場しました。
イミュニティは雷サージや電磁妨害波などJIS規格のJISC61000-6-1「EMCイミュニティ」適合試験に合格した新型LEDフィラメント電球です。